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現在、以下のリンク切れがあります:2016年1-3月のプレスリリース・報道関係各位一斉メール・日報、2014年3月以前の動画、滞留水のPDF資料、2012年のプレスリリースの一部。2012年のプラントパラメータ関連の一部。詳細はこちら。

2018年9月30日(日)

今日のお仕事


福島第一原子力発電所の状況について(日報)

プラント関連パラメータ(PDF) 午前11時時点

サブドレン他水処理施設、09:54-14:55に一時貯水タンクFから排水を実施。排水量は746m3


その他


サブドレン他水処理施設、一時貯水タンクG(26日採取)と集水タンクNo.3(24日採取)の分析結果
サブドレン・地下水ドレン浄化水分析結果(PDF)
一時貯水タンクの分析結果は東電、第三者機関のいずれも運用目標を超えず。トリチウム濃度は東電が870Bq/L、第三者機関が940Bq/L。明日1日に排水の予定。




おまけ


ALPS処理水にトリチウム以外の放射性物質が含まれている、という件(8月20日参照)。8月30、31日の公聴会でも意見表明者から「東電の情報公開はよろしくない」という評価をもらい、1日の第10回「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」で、貯留している処理水の分析結果に関する資料を東電が提出することになった。それで、9月28日に資料の公開と説明があったらしい。それを受けて、マスメディアから報道がなされた。

福島第一原発の処理汚染水 8割以上が基準超の放射性物質 | NHKニュース
汚染水、浄化後も基準2万倍の放射性物質 福島第一原発:朝日新聞デジタル
「除去済み」放射性物質、福島第一の処理水に : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
福島第1原発、タンクの大半で基準値超過 汚染水処理後の放射性物質 再浄化の方針 - 産経ニュース

内容としては、
・貯留水の約84%でトリチウム以外の核種が告示濃度限度以上ある。
・処理水の放射能濃度にはこだわらず、敷地境界の被曝線量を抑制できるレベルで多核種除去設備を運用していたため。
・一部、処理中の事故(2014年3月18日のトラブル)により濃度の高いものがある。
・処分の際には、トリチウム以外の放射性物質を水で薄めるのではなく、再び処理設備を運用して基準以下にすることを検討している。
・広報のやり方に問題があった。
ということらしい。
今回、タンクに貯留しているALPS処理水がどういう状況にあるかが分かりやすく示された。それで、なぜこれがマスメディアに載るような話なのかというと、「ALPS処理水には放射性物質としてトリチウムしか含まれない」という評判が関係者に共有されていたのに、実際にはそうでなかったことが明らかになって、「東電は隠していた」というネタになったからだろう。
「なぜ、実際にはそうではなかったのか」「なぜ、齟齬が生じていたのか」に関しては、長い話になるので今はふれない。これらの報道と、それに対する人々の反応(もっぱら、「やっぱり東電は」という類)を見て、「これは、部分最適と全体最適の話だなぁ」と思ったので、それについて書く。
たとえば、子供が夕飯の食卓に嫌いなニンジンが登場しているのを見て「ニンジン嫌いだよー。ニンジンなんか食べない。」と言う。これに対して母親が「好き嫌いはダメよ。なんでも食べないと大きくなれないわよ。」とたしなめる。母親は、子供がニンジンを嫌いなことは知っている。好き嫌いは理屈ではないし、おいしくないものはどうやったっておいしくはならない。一方で、おいしいものを食べる喜びや、おいしいものを家族で囲む食卓の楽しみ、そういう経験が一生の財産になるだろうことも母親は知っている。だから、好き嫌いをなくそうとして嫌いなものを無理やり食べさせることが子供のためになると単純に考えているわけではない。けれども、母親は献立を立案する際に、食事のおいしさだけでなく、家族の健康(特に、子供の肉体的・精神的成長への有用性)、使用する食材の安全性・経済性、準備に要するリソース、などなどを勘案する必要がある。ニンジンは、比較的廉価で価格が安定しており、保存性にも優れ使い回しのきく素材であり、有用な栄養素を含む緑黄色野菜でもある。しかも、ニンジンが好きな家族もいるかもしれない。したがって、母親は子どもがニンジンを嫌っていることは知っていても、だからと言ってニンジンを食卓から追放しようとはしない。家族の食卓を運営する観点から考えれば、子供のニンジン嫌いはニンジンの使用を断念するほどの重みを持たないと評価するからだ。子供にすれば、嫌いなニンジンが食卓にあるのは一大事だろうが(部分最適)、母親から見ればそれは考慮すべき事項のほんの一部に過ぎないわけだ(全体最適)
多核種除去設備は、トリチウム以外の62核種を除去する性能を持つことは確かめられている。だから、今現在貯留している処理水が告示濃度限度以上であっても、処分するまでに再処理をすれば問題はない。したがって、この件に意味があるとすれば、「事実を隠蔽していた東電はけしからん。」と言うことくらいしかないと思う。それで、それを言ったとして、それで?それで、何をしたいの?
ALPS処理水の処分は、汚染水処理の一環である。汚染水処理は、1Fの廃炉事業の一部である。1Fの廃炉事業は、1F事故の後始末であり、誰がどう見たってやらなければならない仕事だ。けれども、汚染水は昨日も今日も増え続けていて、ALPS処理水の処分ができなければ、いずれ廃炉事業は行き詰ることになる。
ALPS処理水の実態がつまびらかにされていなかったことは、ALPS処理水の処分について検討していく上でよくないことだった。それはそうだ。けれども、2011年から継続しているALPS処理水を処分するための一連の問題の中で、この件がこんなふうに突出して取り上げられ、また、受け手に消費されることが、とてもバランスを欠いた、全体を見渡せていない、不毛な態度だとも思った。

28日の報道の中で、これは大事と思ったのは「処分の際には、トリチウム以外の放射性物質を水で薄めるのではなく、再び処理設備を運用して基準以下にすることを検討している」という点。放射性物質の存在が気になる人たちにとって、この点はとても重要なことだろう。でも、これを報道したのはNHKだけだった。

(以下、10月7日追記)上記の大手メディアの記事とソースが同じと思われる福島民友の記事。

トリチウム以外の処理水「再浄化」 東京電力方針、基準値未満に:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet

朝日新聞の記事との違いは、どこから生まれるんでしょうね。読者層の違いなのか。

近年、新聞は発行部数が減少の一途をたどっていて、中の人は自分のやってる仕事の意義が適正に評価されていないと思ってるんじゃないか。つまり、日々、自尊心が傷ついている。それで、いわゆる承認欲求が高まっていて、「角度を付けた」記事を書きがちなんじゃないか。そうすれば、みんな読んでくれるし「よく書いてくれた」ってほめてもらえる。なーんてね、思ったりもするんだけど、どうなんだろ。フェイクニュースの話を前に(2017年3月7日、2018年4月4日)書いたけど、新聞だって情報産業の一部だし、売れなきゃ商売にならないからね。




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