東電会見の1Fプラント作業関係のメモ(チラ裏)。旧名称:福島第一原子力発電所復旧作業。2013年11月18日の4号機燃料取出し開始、中長期ロードマップ第2期突入を期に名称変更。このブログについて。個人のやってるまとめで、東電の見解とは別ですから誤解のありませんように。あとからちょこちょこ手を入れてます。
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(以下、22日の日報より)15:26に排水を停止。排水量は794m3。
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ALPS処理水の処分について(2020年10月20日)
このページは管理人の独自の見解を書いたものであり、東電が公表している内容ではありませんので、ご注意ください。
10月15日あたりから、ALPS処理水の処分について、政府が海洋放出することを決めて地元関係者に説明を始めたという報道があり、ちょっと話題になっているので、改めてこの件に関して書いておく。
ALPS処理水とは?
3.11の津波で冷却機能を失った原子炉の中で、炉心は高温になり溶融した燃料が損傷し、燃料棒の中に閉じ込められていた放射性物質が露出してしまった。その後も燃料を冷却する必要があったから、原子炉に冷却水を注水し続けた結果、損傷した燃料に触れた冷却水には多量の放射性物質が溶け込み、これまた損傷した原子炉圧力容器と格納容器からもれ出して、原子炉建屋の地下にたまっていった。これが汚染水。この原子炉建屋の地下にたまった汚染水に、建屋周辺の地下水が流れ込んでいくことで、汚染水の量は日々増え続けている。放っておくと汚染水は建屋の外にもれ出てしまうので、くみ上げる必要がある。それで、汚染水をくみ上げてセシウム吸着装置と多核種除去設備で浄化処理をしたものがALPS処理水。3基ある多核種除去設備の初号基の愛称が ALPS(Advanced Liquid Processing System)なので、そう呼ばれている。
処分方法決定の経緯
- 2013年4月 1F廃炉作業における汚染水対策について、東電任せにせず政府が前面に立っておこなうという政府の方針にもとづき、経産省に「汚染水処理対策委員会」設置。
- 2013年12月 汚染水対策処理委員会のもとに「トリチウム水タスクフォース」設置。ALPS処理水処分の方法について技術的な検討を実施。
- 2016年6月 「トリチウム水タスクフォース報告書(PDF)」提出。5つの処分方法について評価。
- 2016年11月 汚染水対策処理委員会のもとに「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」設置。ALPS処理水処分における社会的影響について検討。
- 2018年8月 「説明・公聴会」を開催。
- 2020年2月 「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書(PDF)」提出。処分方法として海洋放出または大気放出が妥当という結論。
- 2020年3月 上記報告書を受けて、東電が処分方法の検討素案(PDF)を公表。
- 2020年4-10月 「多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場」を開催(あわせてパブリックコメントを募集)。←イマココ
- 2020年10月末 政府が基本方針を表明。
- 東電は政府の方針を受けてALPS処理水処分の具体的な対応を開始する。
- 今までため込んでいたものを、なぜ今になって放出するの?
- 基準値以上の放射性物質が入ってるんでしょ?
- 本当に安全なの?
- 放出は心配。保管を続ければいいのでは?
- 風評被害で困るのでは?
- 東電や国の言うことは信用できない。
1.今までため込んでいたものを、なぜ今になって放出するの?
これまで9年間待ってたんだけど、もうこれ以上待てないところまで来ちゃったから。なぜ待てないかというと、もうタンクを置く場所がないから。汚染水は日々増え続けているので、それを浄化処理したALPS処理水を貯めておくタンクも増え続けている。1Fの敷地内でそれを置いておく場所がついに尽きてしまった。今、建設を予定しているタンクの容量は全部で137万m3。これが、2022年秋口にはALPS処理水で一杯になると予想されている。それまでに、ALPS処理水の処分を始めないと、タンクがあふれてしまう。処分をするにはそのための設備が必要で、それを準備するのに約2年は必要ということで、今、処分の方法を決めて動き出さないと、2022年秋に間に合わなくなる。
東電は2011年12月には、タンクを永遠に作り続けることはできないから「いずれはALPS処理水を海洋放出しなければならない」と言っていて、漁協関係者などの理解を得ようとしていたんだけれど、その後もいろいろとあって、結局はそれがかなわないまま今日まで来てしまった(ここらへんのことは、2018年8月20日にも書いた。加害者と被害者の間で、さらに被害が広がりかねない行為について同意を得ることが非常に困難だったのだと想像する。それで、「政府が前面に立つ」と言う話が出てきたのではないだろうか。実際の交渉がどうだったのか、誰かきちんと取材してくれたらいいのにね)。
なぜ2011年の時点で東電が「海洋放出」と言っていたかというと、多分、それが業界の標準だからだと思う(3.本当に安全なの?を参照)。当時、東電はALPS処理水の海洋放出による処分がこんなに難しいとは思っていなかったんだろうと想像する。東電が当初予定していたタンクの容量は約32万m3。これがいっぱいになる前に、ALPS処理水の海洋放出を始めるつもりだったのだろう。ところが実際には「関係者の同意を得るなどとんでもない」という状況だったため、タンクを増設して増え続けるALPS処理水をため込むことで今日までしのいできたわけだ。その間、建屋に地下水が流入する量(=汚染水の増え分)を少しでも減らせるよう様々な対策をやってきていて、初めは1日に400m3くらいだった流入量が、今は150m3まで減ってきている。でも、原子炉への注水を続けるかぎり、これが0になることはない。
なお、東電としては「もう処分できれば方法はなんでもいいからとにかく政府が決めた方針にしたがう」というところだと思うので、処分方法は海洋放出じゃなくても全然OKなんじゃないかな。
2.基準値以上の放射性物質が入ってるんでしょ?
入ってます。現在タンクで貯めているALPS処理水の7割強が基準値(告示濃度限度)以上の放射性物質を含んでいます。それで、そういうやつは処分に先立ち、基準値以下に浄化処理をする(二次処理)と東電は言っている。なので、海洋放出などの処分をおこなう時には、基準値未満になっているはず。
・「告示濃度限度」については、エネ庁のサイトに解説がある。
「安全・安心を第一に取り組む、福島の“汚染水”対策④放射性物質の規制基準はどうなっているの?」
・ALPS処理水に基準値以上の放射性物質が入っている経緯について。
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書(PDF)13頁「(5)ALPS処理水の性状について」
・実際の海洋放出の方法については、以下の東電の資料の7頁以降を参照。
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書を受けた当社の検討素案について(PDF2.48MB)(2020年3月24日)
・試験的な二次処理を9月から実施している。先日、二次処理した結果が速報された。
福島第一原子力発電所 多核種除去設備等処理水の二次処理性能確認試験結果(速報) (PDF320KB)(2020年10月15日)
3.本当に安全なの?
私は医者でも学者でもないので、安全かどうか、本当のところはわかりません。でも、原発や原子力関連施設では、トリチウムを含む水を海洋や大気に放出して処分するのを世界中で(もちろん国内でも)普通にやってるらしいので、今さら安全性について問題視することもないのではなかろうか、とは思っている。
・世界の原子力発電所等からのトリチウム年間排出量。
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 説明・公聴会 説明資料(PDF)38頁
ところで、実は1Fではすでにトリチウムを含む水の海洋放出をやっているんですけど、ご存知でした?地下水バイパスとサブドレンという設備でくみ上げた地下水にはトリチウムが含まれているのだけれど、これを日常的に海洋放出しています。地下水バイパスは2014年5月から、サブドレンは2015年9月から、それぞれ運用中。これらの設備で海洋放出する際には、放出する水の分析を毎回、事前におこなっている。それも、東電の分析だけでは理解が得られない場合もあろうということで、必ず第三者機関の分析もやって一緒に公表している。このやり方は、ALPS処理水の処分でも踏襲されるんじゃないかな。
・サブドレン放出前の分析結果の例(2020年10月18日放出分)。
サブドレン・地下水ドレン浄化水 排水前分析結果(PDF)
・サブドレン放出中の海水のサンプリング結果(2020年9月3日放出時)。海水のサンプリングは月1回実施している。
サブドレン・地下水ドレン浄化水 排水時の海水分析結果(PDF)
トリチウムを含む水を海洋放出していると聞けば、当然、魚はどうなのか気になるところです。魚類の調査もおこなわれています。1F港湾内の魚はさすがにセシウムが数十Bq/kgのものがいますが、最近はそもそも魚があまりいません(港湾の内と外で魚が行き来しないように網を張るなどの対策をしている。また、サンプリングを兼ねて港湾内で魚の駆除をおこなってきた)。港湾外20km圏内でも、検出限界値を超える個体はあまりいません。
・1F港湾内および周辺海域(20kn圏内)での魚類の調査結果(2020年4ー6月採取分)
魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所港湾内>(PDF)
魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所20km圏内海域>(同所港湾内を除く)(PDF)
魚類の調査では、セシウム濃度の高い個体についてはストロンチウムを分析。また、トリチウムの分析もやっています。
・魚類のストロンチウムとトリチウムの分析結果(2020年4-6月採取分)
魚介類の核種分析結果<福島第一原子力発電所20km圏内海域>2020年度 第1四半期採取分(PDF)
魚類の分析は、福島県でも実施している。こちらは、1Fから20km圏外で広域に実施しているが、海の魚で検出限界値を超えるものは2016年以降は出ていない。
4.放出は心配。保管を続ければいいのでは?
2018年におこなわれた公聴会には、そういう意見がたくさん寄せられました。もっとタンクを作れば良いではないか、設置場所は1F敷地内に限定する必要はない、大型タンクなら容量を増やせるだろう、そうすれば地上保管を続けられる、などなど。それらの意見については、調査検討してみると、結局、有望なものは見当たらない、という結論になりました。詳しくは以下の資料をどうぞ。
・貯蔵継続及び処分方法について(PDF)(多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第10回)配布資料)
・多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書(PDF)(2020年2月20日)11頁「(3)タンク保管容量の拡大について(敷地外への移送・保管及び敷地の拡大を含む)」
東電は、保管を継続する場合のメリット・デメリットとして
- メリット:放射性物質を環境に放出しないですむ。置いておけば放射能量が減少する。
- デメリット:廃炉の終わりにタンクが残る。廃炉事業に必要な施設が設置できない。
・東電の1F敷地の利用計画について。
多核種除去設備等処理水の貯留の見通し(PDF)(多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第13回)配布資料)8頁以降。
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書を受けた当社の検討素案について(PDF2.48MB)(2020年3月24日)18頁。
あと、タンクで保管するのも実はけっこう大変なのです。現在使用しているタンクは1基あたりの容量がおよそ1000m3で、これが1000基以上ある。漏えいがあってはいけないので、タンクすべてに水位計を設置して常時遠隔監視し、さらに人力で毎日巡回をおこなって漏えいの兆候を見逃さないようにしている。ALPS処理水がタンクから大量に漏えいするという事件はこれまでのところは起きていないけれど、保管を続けるというのは漏えいのリスクと常に向き合っていくということでもあるわけです。
5.風評被害で困るのでは?
残念ながら、そうかもしれません。特に農漁業関係者の方々は心配しておられると思います。だから、そういうことを少しでも減らせるよう、せっせと福島県産品を買おうと私は思っています。また、風評被害を防ぐ上で一番大きな役割を果たすことができるのは、東電でも国でもなく、マスメディアだと思います。彼らの仕事にも期待しましょう。
・多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書(PDF)29頁「4.風評被害対策の方向性について」
東電は、風評被害対策をやっても被害が出た場合は、賠償すると言っています。
・東電の風評被害対策および賠償については以下の資料の11頁以降を参照。
多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書を受けた当社の検討素案について(PDF2.48MB)(2020年3月24日)
6.東電や国の言うことは信用できない。
私も彼らのことを信頼しているわけではありません。でも、一番たくさんの情報を持っているのも当事者である彼らです。彼らが何をしようとしているのか、何と言っているのか、情報を集めて判断しよう思っています。どう行動するのが私にとって利益になるのか、それは私自身にしか判断できませんから。
彼らの言うことは信用できないから反対、というのは、自分の判断の根拠を彼らに委ねることになるので、むしろ危険なことだと思います。